AIの読み上げがついに人間らしくなった理由と、まだ崩れる場面
読み上げというと、何でも読み間違える平板なロボット声を思い浮かべる人は多いはずです。でも、それはもう過去の話です。合成ナレーションはここ数年で急速に良くなり、今は何時間でも聴いていられるくらい心地よくなっています。何が変わったのかは、知っておいて損はありません。単純に読み物として面白いですし、しくみがわかれば、いちばん自然に読ませるコツも、どこまで期待していいのかも見えてきます。
かつての方式と、なぜロボットに聞こえたか
何十年もの間、読み上げは2つの機械的な方式のどちらかで動いていました。
古いほうは、母音と子音がどう作られるかというルールから音を合成するもの。あの独特のブーンとした人工的な声は、ここから生まれました。その次の世代が連結合成です。実在の人が発した何千もの短い音の断片を録音しておき、再生時にその場でつなぎ合わせます。単語ひとつを取ればずっと人間に近づきましたが、つなぎ目が耳につくうえ、一つの文としてのまとまりがありません。単語を読み上げることはできても、そこに芝居をつけることはできませんでした。
どの方式にも共通して欠けていたのがプロソディ、つまり話し言葉の抑揚です。疑問文の終わりで声が上がること、大事な語に強勢が落ちること、場面が変わる前の短い間。プロソディは声が生きて聞こえるかどうかの大半を決めるのに、ルールと断片に頼る方式には、それがほとんどありませんでした。
何が変わったか:話し言葉の流れを学ぶモデル
今の読み上げは、大量の人間の話し言葉で学習したニューラルネットワークが生成しています。断片をつなぐのではなく、モデルが自然な話し方のパターンを学び、音をまるごと作り出します。プロソディもルールではなく実例から学ぶので、疑問文への抑揚も、正しい語への強勢も、ほぼ外しません。
さらに質を押し上げるものが2つあります。ひとつは、より大きなモデルをより多様な音声データで学習させること。細かなニュアンスをもっと捉えられるようになります。もうひとつは、リアルタイム生成ではなく前もって書き出すこと。システムが文や段落をまたいで先を見渡せるので、次に何が来るかを知った上でペースと強調を整えられます。スタジオのクラウド音声が落ち着いてなめらかに聞こえ、その場で作る軽い音声が「読み間違いはないけれど、それだけ」に聞こえる。その差の大きな部分は、この先読みから来ています。
まだ崩れる場面
まだ解決したとは言えませんし、できたふりをしても仕方がありません。出来のいいシステムでも、こういう場面ではやはりつまずきます。
- 珍しい名前と造語。 ファンタジーの固有名、まれな姓、外来の借用語は推測になり、ときに外れます。
- 同綴異音語。 綴りが同じで読みが違う語。“He will lead the way”と”a lead pipe”、“a bass guitar”と”a bass in the lake”のような場合です。どちらの発音かを決めるには意味を読む必要があり、ときどき取り違えます。
- 皮肉と含意。 皮肉のつもりの一文が、そのまま字義どおりに読まれてしまいます。字面にはその口調が出ないからで、人間のナレーターなら文脈の理解で補うところです。
- ずっと前を受けた強調。 ある語の重みが、何段落も前に出てきた言葉で決まることがあります。三段落あとで効いてくる伏線のような読みは、今もうまく届けきれません。
これが今の限界です。少しずつ狭まってはいますが、なくなってはいません。読み手の解釈が命になる本で、腕のいい人間のナレーターがいまも表現力で上をいく理由は、ここにあります。
いちばん自然に読ませるコツ
実際に効くことをいくつか挙げます。
- 手をかける価値のある本は、いい方の音声を選ぶ。 スマホなら、端末の音声は無料でその場ですぐ聴けますが、少し平板です。クラウドで書き出す音声ははるかに大きなモデルで作るので、聴けばわかるくらい人間に近くなります。BookNPCではこれがスタジオ版にあたります。両者の使い分けは端末とクラウドの読み上げにまとめてあります。
- iOSなら、プレミアム音声を入れる。 無料の端末音声でも、これを足すとぐっと良くなります。手順は短いガイドにあります。
- きれいなファイルから始める。 合成音声の読みは、渡したテキストの質を超えられません。章立てや段落がきちんと整ったEPUBはなめらかに読めますが、体裁の崩れたファイルでは、どんな音声もつまずきます。
正直なところ
AIの読み上げは、「アクセシビリティのために我慢して聴くもの」から「楽しみで読むのにも心地よいもの」へと変わりました。たいていの本は、たいていの場面で自然に聞こえます。それでも、朗読そのものが読みどころになる本では腕のいい人間の朗読家にまだ届きませんし、固有名や語呂合わせをときどき外します。この二つは、どちらも今の本当のところです。
大事なのは、それで何ができるようになったかです。商業録音されたごく一部の本だけでなく、手持ちのどんな本でも自然な読みで聴けるようになりました。BookNPCでは、スタジオ版はクラウドで書き出し、無料版は端末の音声を使います。技術が今どこまで来ているか、好きな一冊を選んで、自分の耳で確かめてみてください。